「最後に歯医者に行ったのはもう何年も前…」日本橋で毎日忙しく働きながら、歯の痛みや気になる箇所をずっと我慢してきた方は、あなただけではありません。「また行かなきゃ」と思いながらも、気づけば月日が経っていた——そんな経験をお持ちの方が、実はとても多くいらっしゃいます。この記事では、歯科恐怖症の原因を「怖さの種類」ごとに分けて、歯科医院側でできる具体的な配慮とあわせて丁寧に解説します。「怖いけれど、一歩だけ踏み出してみようか」と感じていただけたなら幸いです。
「歯医者が怖い」は特別なことじゃない──日本橋のオフィス街で働く方にも多いお悩みです
思っているより多い「歯科恐怖」を持つ人の割合
歯科治療への不安や恐怖は、特定の一部の方だけが抱えるものではありません。J-STAGEに掲載された日本歯科麻酔学会雑誌の調査によると、20〜79歳を対象にした調査で、程度の強い歯科恐怖をもつ者は11.3%に上ることが報告されています[1]。また、J-STAGEに掲載された別の論文では、歯科恐怖は小児期に与えられた疼痛・騒音などの負の経験が引き金となることが多いとされており、5〜16%の患者が歯科治療に対して強い恐怖心を有するとされています[2]。
日本橋・三越前エリアは、昼夜問わず多くのビジネスパーソンが行き交うオフィス街です。日々の仕事が忙しく、「痛くなったら行けばいい」と後回しにしているうちに、気づけば数年が経っていた——という方のご相談を、当院でも多くお聞きします。歯科への恐怖は、そのハードルをさらに高くしてしまいます。
「怖い」と「面倒」は別物。でも結果は同じ
歯科を長期間受診しない原因には「怖い」だけでなく「忙しい」「症状がまだ軽い気がする」という要因も重なります。厚生労働省が公表した「令和6年歯科疾患実態調査」では、過去1年間における歯科検診受診割合が初めて6割を超えた一方で[3]、裏を返せば、いまだ相当数の方が定期的な受診に至っていないという現状があります。
恐怖や不安が受診を妨げる大きな要因のひとつであることは、研究でも繰り返し指摘されています。「怖いから行けない」を放置していると、口腔内の状態は進行し、いざ受診したときの治療内容がより複雑になりやすい——という悪循環に陥りかねません。まずは「自分の怖さの種類」を知ることが、その循環を断ち切る第一歩です。
歯科恐怖症は「意志の弱さ」ではない
歯科恐怖は根性論や気持ちの持ち方だけで解決できるものではありません。J-STAGEに掲載された日本歯科心身医学会雑誌の論文「歯科恐怖を知る」では、恐怖を感じる刺激の種類には性別・年齢・人種によらず一定の傾向があり、多くの人が共通して恐怖を感じる特定の状況・器具・処置が存在することが示されています[4]。
つまり、歯科への恐怖は「その人の性格の問題」ではなく、きわめて普遍的な感覚です。医院側が適切な配慮を行うことで、怖さを抱えたまま通える環境は整えられます。
まず知っておきたい:歯科恐怖症には段階がある
軽度・中等度・重度の違い
歯科恐怖は一律ではありません。「ちょっと緊張する」程度のものから、「歯科医院のそばを通るだけで体が固まる」という状態まで、幅広いスペクトラムがあります。
- 軽度:治療中は少し緊張するが、受診はできる
- 中等度:特定の処置(注射・ドリルなど)に強い不安を感じ、受診を先延ばしにしやすい
- 重度:歯科医院への予約・来院自体が困難。身体症状(手の震え・吐き気・動悸など)が出ることもある
当院では初診時に、「特に苦手なことはありますか」「過去に辛い経験はありましたか」といったヒアリングを行っています。これは治療の準備のためだけでなく、どの段階の不安があるかを把握し、患者さんに合った対応を考えるためです。
歯科恐怖が生まれるきっかけ
歯科恐怖の原因として研究で繰り返し示されているのが、過去の治療体験です。小児歯科学雑誌に掲載された研究では、幼少期に抑制的な対応(体を押さえられるなど)を経験した群では、現在でも歯科治療に対して恐怖や不安を感じる者が18%に上った一方、そうした経験を持たない群では5%にとどまっており、過去の体験が現在の歯科恐怖に影響しうることが示唆されています[5]。
また、歯科恐怖心の強い患者の50%は歯科医師自身を問題視しており、そのうち81%は痛みよりも歯科医師の態度そのものが恐怖の対象になっていると報告されています[4]。これは「説明なしに治療を進められた」「痛みを訴えても止めてもらえなかった」といった経験が、恐怖の核心になりやすいことを示しています。
「苦手なこと」を言葉にするだけでいい
重要なのは、「自分の怖さ」を言語化して伝えられる環境があるかどうかです。当院では野田奈菜院長のもと、「自分自身や自分の家族に受けてほしい治療を、すべての患者様に提供する」という診療理念を掲げています。「音が怖い」「注射が苦手」「過去に辛い経験がある」——どんな理由でも、初診時にスタッフへそのままお伝えください。治療を急かさず、お伝えいただいた情報をもとに一緒に進め方を考えます。
【音が怖い】ドリルの音だけで体が固まる方へ
なぜ「音」だけで体が反応するのか
ドリル(切削器具)の「キーン」という高周波音は、聴覚的な刺激であると同時に、「何かが削られる」という心理的なイメージを強く喚起します。過去の治療経験と記憶が結びついている方にとっては、音を聞くだけで体が緊張状態になることがあります。これは条件反射に近い反応であり、意志の力でコントロールするのは容易ではありません。
J-STAGEに掲載された論文では、歯科恐怖は小児期の疼痛・騒音などの負の経験が引き金となりやすいことが指摘されており、音そのものが恐怖の対象になりうることが示されています[2]。
当院での配慮:まず「音のしない処置」から始める
当院では歯科が苦手な方の初診について、いきなり削る・抜くといった処置から始めることはしていません。まず口腔内スキャナー(3Dスキャン)や歯科用CTを用いて現在の状態を確認し、大型モニターで患者さんと一緒に画像を見ながら状態を共有することからスタートします。「何をされるかわからない」という不安を減らすことで、音に対する過敏な反応が和らぐ場合があります。
処置が必要な場合も、手用器具を先行して使用する、短時間で区切る、途中で「今どんな状態ですか?」と声かけを行うなど、音や振動による刺激をできる限り段階的に進める工夫をしています。
「止めていい合図」を事前に決めておく
「怖くなったら途中で止めてほしいけれど、言い出しにくい」という声をよくお聞きします。当院では治療前に「手を挙げたら必ず止めます」というルールをお伝えしています。この「コントロール感」を持てることが、不安の軽減に大きく寄与します。苦手な処置の途中でも、遠慮なく合図を出してください。
【注射が怖い】麻酔の針が苦手な方へ
「麻酔が怖くて治療できない」という本末転倒の悩み
「歯の痛みは我慢できる。でも注射が怖くて歯医者に行けない」——これは決してめずらしくない悩みです。歯科治療の多くは局所麻酔(注射による麻酔)を伴いますが、この注射への恐怖が来院を妨げる大きな壁になっています。
表面麻酔の役割:「注射の前の麻酔」という選択肢
注射への恐怖を軽減するうえで重要なのが表面麻酔です。日本歯科医師会「テーマパーク8020」では、表面麻酔とは麻酔薬を歯茎に塗って表面の感覚を麻痺させる方法であり、表面麻酔を行った後に注射をすると「麻酔が痛い」という感覚がずいぶんとラクになると説明されています[6]。
当院では、麻酔の注射を行う前に必ず表面麻酔を塗布し、数分間しっかり効かせてから処置に移ります。また、麻酔薬を注入するスピードを極力ゆっくりにすること、細い針を使用することも、注射時の不快感を軽減するために行っている工夫です。「麻酔が怖い」という方は、治療前に必ずお申し出ください。
臨床歯科麻酔管理指導医としての視点
当院の野田奈菜院長は臨床歯科麻酔管理指導医の資格を取得しています。麻酔管理に関する専門的な知識と技術をもとに、患者さんの状態や不安の程度に合わせた麻酔の進め方を判断しています。「注射が怖い」とひとくちに言っても、「針を見るのが怖い」「チクッとする感覚が怖い」「麻酔が効いていくときの感覚が怖い」など、苦手な部分は人によって異なります。具体的に教えていただくことで、より対応しやすくなります。
【過去のトラウマ】「あの時の経験」が今も頭から離れない方へ
トラウマが来院行動に与える影響
歯科における恐怖の多くは、過去の体験に根ざしています。歯科恐怖に関する研究では、歯科に対して負の印象を持つ者のDFS値(歯科恐怖スコア)は48.28であったのに対し、正の印象を持つ者は27.75であり、歯科に対する印象の違いが恐怖の強さに有意な差を生んでいることが示されています[7]。
「強引に治療を進められた」「痛いと訴えたのに止めてもらえなかった」「子どもの頃に怖い思いをした」——こうした記憶は、成人後も歯科への回避行動に影響し続けます。これは心理的に自然な反応であり、責めるべきことではありません。
「話すだけ」を目的にした初診も歓迎します
当院では、必ずしも初診で治療を行わなければならないと考えていません。「何が怖かったのか」「今どんな状態を懸念しているか」をお聞きし、現在の口腔内の状態をCTや口腔内スキャナーで確認したうえで、「今後どんな順番で進めるか」を一緒に相談することを優先しています。
「まず話だけ聞いてほしい」というご希望も、初診受付時にお伝えください。治療を始める・始めないの判断は、患者さん自身が持つべきものです。
「系統的脱感作」の考え方:段階を踏んで慣れていく
心理学的なアプローチとして、歯科恐怖の克服には段階的に慣れていくという方法が有効とされています。最も不安の少ない状況から始めて、徐々にハードルを上げていく「系統的脱感作法」と呼ばれる方法です。
J-STAGEに掲載された日本臨床歯周病学会会誌の論文「歯科恐怖症患者への対応」(水木さとみ、2023年)では、歯科恐怖症、不安軽減、患者対応、コミュニケーションがキーワードとして挙げられており、患者との関係性構築と段階的な対応の重要性が示されています[8]。
当院でも、初回は「見るだけ」「歯石除去だけ」といった軽い処置から始め、徐々に信頼関係を築きながら治療の幅を広げていくアプローチをとることができます。
まとめ
- 歯科への恐怖は普遍的:程度の強い歯科恐怖を持つ人は調査で11.3%と報告されており[1]、「怖い」と感じることは特別なことではありません。
- 恐怖の種類は人によって異なる:音・注射・過去のトラウマなど、苦手な要因は個人差があります。自分の「怖さ」を言語化して伝えることが、適切な対応への第一歩です。
- 表面麻酔・細い針・ゆっくりした注入:注射への恐怖には、局所麻酔前の表面麻酔塗布が有効で、日本歯科医師会も推奨する標準的な配慮です[6]。
- 「まず話すだけ」から始められる:歯科恐怖症の方には、初診で治療をせず、現状確認と相談のみを行う選択肢があります。焦らず、ご自身のペースで進めることが大切です。
- 段階的に慣れていく方法が有効:いきなり高いハードルを超えようとせず、不安の少ない処置から少しずつ経験を積み重ねることで、歯科への恐怖を軽減できる可能性があります。
「怖くて歯医者に行けない」と感じている方も、まず気持ちだけ聞かせてください。東京日本橋クレア歯科・矯正歯科では、治療を急かさず、あなたのペースで進める診療を心がけています。三越前駅・日本橋駅から徒歩圏内、中央区日本橋小舟町に位置する当院は、土日・祝日も診療しておりますので、平日に時間が取りにくい日本橋周辺のビジネスパーソンの方もお気軽にご相談ください。まずはお電話(03-6661-6604)またはWebからご予約いただけます。初診費用の目安は約3,000〜5,000円(保険適用)です。クレジットカード・電子マネー、デンタルローンにも対応しています。
はじめて受診される方は、初めての方へ(初診の流れ)もあわせてご覧ください。
参考文献
[1] 小川美香ほか「歯科治療に対する恐怖感と歯科麻酔の認知度および潜在需要:日本語版Modified Dental Anxiety Scaleを用いて」日本歯科麻酔学会雑誌 48巻2号 jstage.jst.go.jp
[2] 東京医科歯科大学大学院ほか「歯科診療中の小児患者の自律神経活動および脳活動の記録解析」小児歯科学雑誌 54巻4号 jstage.jst.go.jp
[3] 厚生労働省「令和6年歯科疾患実態調査の結果(概要)」mhlw.go.jp
[4] 苅部洋行「歯科恐怖を知る——疫学と原因——」日本歯科心身医学会雑誌 34巻1-2号 jstage.jst.go.jp
[5] 鬼頭秀明ほか「幼少期の歯科治療体験が現在の歯科恐怖に及ぼす影響」小児歯科学雑誌 37巻5号 jstage.jst.go.jp
[6] 日本歯科医師会「歯科麻酔」テーマパーク8020 jda.or.jp
[7] 愛知学院大学ほか「歯科恐怖に関する研究」小児歯科学雑誌 39巻5号 jstage.jst.go.jp
[8] 水木さとみ「歯科恐怖症患者への対応」日本臨床歯周病学会会誌 40巻2号 jstage.jst.go.jp